平家琵琶の豆知識

平家琵琶の相伝者の立場から、やや専門的な解説をするブログです

連れ平家(つれへいけ)

平曲は、原則として一人で語りますが、時により、二人で語ろう、という状況が生じることもあります。

このようなときには、ひとりを「導師(どうし)」、もうひとりを「脇(わき)」として、ひとりずつ語ったり、二人が声を合わせて語ったりします。
これを「連れ平家(つれへいけ)」と言います。

好き勝手に交代に語るのではなく、こういう部分は導師が一人で、こんな部分は脇が一人で語り、これこれこういう条件なら二人が「連れ」で語りましょう、という<法則>が存在します。
つまり、どの句でも「連れ平家」をすることが可能です。

けれど、どの句でも上手く(効果的に)できるとは限りません。
私の使っている譜本は、平家物語を200の「句」にわけていますが、そのうち数十句に、連れ平家のための書き込みがあります。
<法則>どおりに「トウ(導)」「ワキ(脇)」「ツレ(連)」という字が記されているものもありますし、お能のシテとワキのように、登場人物にあわせてあるものもあります。
たとえば、「宇治川」では、佐々木高綱が「トウ」、梶原景季が「ワキ」になります。
「敦盛最期」では、熊谷直実が「トウ」、平敦盛が「ワキ」です。

<法則>どおりでも配役でもなく、単に曲節の変わり目で語り手を交代する場合や、極めて例外的に3人以上一緒に語り進めるときは、「語り替え(かたりがえ)」とか「語り分け(かたりわけ)」などと言うようです。

なお、「この句は必ず連れ平家で語りましょう」というものはありません。

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「康頼祝詞」「小督」「忠度都落」「宇治川」「木曾最期」「千寿前」「那須与一」「先帝御入水」「内侍所都入」の見出しページにある、変体仮名の譜本の写真を眺めてみてください。
文字の途中や行間に、「導」や「ワキ」といった記入が見つかるはずです。