平家琵琶の豆知識

平家琵琶の相伝者の立場から、やや専門的な解説をするブログです

「木曾最期」の日

本日は旧暦の一月二十一日。「宇治川の合戦」の翌日ですから、木曾義仲の命日となります。

比は正月二十一日、入相(いりあい)斗(ばかん)の事なれば、薄氷(うすごおり)は張ったりけり。深田(ふかだ)有るとも知らずして、馬を颯(ざっ)と打ち入れたれば、馬の頭(かしら)も見へざりけり。あおれども、あおれども、打てども打てども働かず。
(出典は昨日と同じ)

今日は、どんな形の月が、何時ごろに昇るか、ご存知ですか? 下弦の月よりも少しだけ丸い月が、夜の11時頃にようやく東の空に見え始めるのです。
入相とは夕暮れですから、まだまだ月は姿をみせてはおりません。薄暗くて視界が悪い寒い夕暮れのこと。合戦で赴いた不案内の土地ですから、氷が張った深田に、義仲を乗せた馬がはまってしまいます。
平家琵琶ではこの場面を中音域でゆったりと語ります。高音域の情景とはまた違い、義仲や馬の、寒くて淋しい気持ちが伝わってくるような気がします。